統合失調症ナビ

監修: 藤田医科大学医学部 精神神経科学講座 教授
岩田 仲生 先生

サイトマップ

エドワルド・ムンク(1863-1944)1-4)

19世紀から20世紀のノルウェー出身の画家エドワルド・ムンク。彼の代表作で誰もがいちばんに思い浮かべるのが『叫び』でしょう。

『叫び』には、赤く染まったフィヨルドの不気味な夕景と、橋の上には耳を両手でふさぐムンク自身の姿が迫真的に描かれています。ムンクは、「太陽が沈みかかっている夕刻にフィヨルド沿いの路を歩いていると、自然を貫く大きな叫び声が果てしなく続くのを聞いた」と記しています。

ムンクがこの作品を描いたのは1893年でした。そこから10年経過した1904年前後に、人間関係のこじれもあって被害妄想が強くなり、アルコールも多く飲むようになりました。そして、幻聴や妄想に苦しんだムンクは、1908年に精神科医のもとで療養生活を送りました。

ムンクの生涯と病気との関係を調べる研究者の間では、「ムンクは30歳頃(1890年代:『叫び』を描いた頃)から統合失調症の先駆症状があり、40歳頃(1900年代)から被害妄想の発展があったのではないか」、という議論がされています。

そして、『叫び』は「統合失調症(妄想、不安など)への苦悩が絵画に反映されている」という指摘も多いのです。

参考文献
  1. 白石弘巳監修: 患者のための最新医学 統合失調症 正しい理解とケア. 高橋書店, 東京, 2015, p. 21
  2. 角田京子: 病跡誌. 2010, 80, 47-63
  3. 融道男: 心と脳の関係. ナツメ社, 東京, 2005, pp. 118-119
  4. 渡邉良弘ほか: Pharma Medica. 2002, 20(11), 77-81
ご注意ください
本サイトで解説する病気の症状は典型的なものを紹介したもので、記載された症状がその病気をもつすべての方に当てはまるわけではなく、また症状のどれかに当てはまるからといってその病気であることを示すものではありません。治療法その他についても、あくまでも代表的なもののみを掲載しており、治療法すべてを網羅するものではありません。病気の診断および治療に関しては、必ず医師による説明を受けるようにしてください。