監修: 藤田医科大学医学部 精神神経科学講座 教授
岩田 仲生 先生

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ジョン・ナッシュ(1928-2015)1-4)

ジョン・ナッシュはアメリカの数学者です。ゲーム理論に関して大きな貢献をしたとして1994年にノーベル経済学賞を受賞しました。また、統合失調症であることを明らかにしていました。

ナッシュという名は経済学者の間では世界中に知れ渡っていましたが、一般の人にはほとんど知られていませんでした。しかし、2001年にナッシュをモデルにした映画『ビューティフル・マインド』がアカデミー賞4部門に輝くと、その名は多くの人に知られるところとなりました。

ナッシュは「ナッシュ均衡」など、画期的な数学理論を次々と発表していきます。しかし、成果が認められた30歳以降に被害妄想が強くなり、「世界平和が脅かされている」といった世界の危機感を口にするようになります(「世界没落体験」と呼ばれる、統合失調症の症状のひとつです)。

統合失調症と診断されたナッシュは入院しますが、しばしば服薬を自分で中断しており、幻覚や妄想が残る段階で退院したためにたびたび再発します。しかし、服薬を含めた治療をしたことに加え、夫人の献身的な支え、同僚研究者の理解などもあり、長い年月を経て回復が訪れます。

このナッシュの治療経過から、統合失調症の回復に必要なものは「安全」と「自由」、「親密さ」であり、何よりも「素晴らしい世界(ビューティフル・ワールド)」とのつながりを取り戻したこともポイントだったであろうと指摘する解説もあります。

約30年間で激しい幻覚・妄想により3回入院したものの、最終的に回復したナッシュの闘病生活は、今日の統合失調症治療においても示唆に富んでいるといえるでしょう。

参考文献
  1. The NOBEL PRIZE: John F. Nash Jr. Biographical.[2021年7月17日閲覧]
  2. 渡邉良弘ほか: Pharma Medica. 2002, 20(11), 77-81
  3. 古川哲雄: 神経内科. 2018, 89(2), 224-226
  4. 高木俊介: 統合失調症のひろば. 2015, 6, 45-50
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