統合失調症ナビ

監修: 藤田医科大学医学部 精神神経科学講座 教授
岩田 仲生 先生

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さまざまな精神療法

統合失調症の精神療法にはいくつかの種類があります。

ここでは代表的な精神療法である「支持的精神療法」、「認知行動療法」、「集団精神療法」を紹介します。

支持的精神療法1, 2)

統合失調症の患者さんは幻覚や妄想といった症状への不安、つらさ、苦しみを抱えています。支持的精神療法は、このようなつらさや苦しみに対して医師が話を聞き、専門家の立場からアドバイスをしたり、手助けをしたりする治療で、カウンセリングの一種です。

「話し合うだけで治療になるの?」と思う人もいるかもしれませんが、医師は統合失調症の症状などを理解しているので、患者さんは話を聞いてもらうだけでも安心感を得られます。

認知行動療法2, 3)

認知行動療法はもともと「認知療法」と「行動療法」として独立していたものが統合された治療法です。認知療法では認知のゆがみ(極端な考え方など)の修正を目指します。行動療法では「不適切な行動は過去に学んだことが間違っていた結果」と捉えたうえで、適切な行動をするための学習をしていきます。

認知行動療法ができた頃はうつ病や不安障害に限られる治療法と考えられていましたが、今では統合失調症でも効果が認められています。統合失調症の場合、妄想や幻聴といった陽性症状を認知の問題と捉え、認知行動療法で治療されることがあります。

集団精神療法2, 4)

集団精神療法では、複数の患者さん(と医療者)がそれぞれの抱えている問題について話し合う場を通じ、症状・行動の改善や心理的問題の解決・緩和などをうながします。

具体的には、患者さんの「同じ問題をもつ人の体験を聴けた」、「自分の体験がほかの人に受け入れてもらえた」、「みんなと同じ思いを共有できた」といった感覚が、治療につながっていきます。

また、「自分の障害を受け入れられる」、「『自分はこれでいいんだ』と思えるようになる」、「家族に対する自分の複雑な気持ちが理解できた」など、グループでの体験によって患者さんは自分が抱える問題を認識できたり、理解できたりするきっかけを得られることもあります。

同じ悩みを共有することで孤独感を緩和することができるのも、集団精神療法の良いところです。

参考文献
  1. 上島国利: 名医の図解 よくわかる、上手につきあう統合失調症. 主婦と生活社, 東京, 2008, pp. 60-61
  2. 白石弘巳監修: 患者のための最新医学 統合失調症 正しい理解とケア. 高橋書店, 東京,2015, pp.114-121
  3. 白石裕子ほか: 香川県立保健医療大学紀要. 2004, 1, 117-122
  4. 田辺等: 臨床精神医学. 2012, 41(増刊), 203-209
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