監修: 藤田医科大学医学部 精神神経科学講座 教授
岩田 仲生 先生

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ルイス・ウェイン(1860-1939)1, 2)

ルイス・ウェインはイギリス・ロンドン出身のイラストレーターです。流行の服を身に着けた、デフォルメされた表情豊かな顔、大きな目が特徴的な「ウェイン・キャット」と評される猫を描き、人気を博しました。同じ時代を生き、イギリスにも留学した夏目漱石が、小説『吾輩は猫である』の一節で「ウェイン・キャット」の絵葉書について記しています。

ウェインは1884年に結婚しますが、妻が乳がんを患ってしまいます。闘病中の妻を癒すために2人で飼い始めたのが猫のピーター。ウェインはピーターを題材に絵を描き始めます。この頃の絵は写実的(猫そのままの姿)でした。その後、ウェインは猫を擬人化した「ウェイン・キャット」を世に出し、有名になります。それまで、イギリスでは猫を忌み嫌うことが多かったのですが、ウェインは「絵を通じてイギリスにおける猫の地位を上げた」と評されるほどに、その影響力は絶大でした。

しかし、1910年代に自身の交通事故や母の死、さらに5人いる妹のうち2人が亡くなったことなどが重なり、次第に「ありもしない品評会の話をする」、「『霊が自分を苦しめる』と訴える」といったことが目立つようになります。やがて、残った3人の妹を敵視するようになり、最終的に統合失調症の診断を受けました。

ウェインは診断後、亡くなるまでに3つの病院で療養しましたが、その間も猫の絵を描き続けました。統合失調症を発症してからの作品には猫の背景にオーラのような線が入っていたり、色鮮やかな幾何学模様をスペース全体にちりばめていたりと、「ウェイン・キャット」とは趣の異なる絵もありました(万華鏡のようなデザインもあり、「万華鏡猫」と呼ばれています)。なお、ウェインの病状や絵の変遷は今でも研究対象となっており、さまざまな説が唱えられています。

終の棲家となった最後の入院先は美しい庭園に囲まれ、猫も飼われていました。ウェインはその病院で絵を描き続けながら、一時疎遠になった家族とも交流をもち、もとの穏やかな性格を取り戻していったそうです。

参考文献
  1. 南條竹則: 吾輩は猫画家である ルイス・ウェイン伝. 集英社, 東京, 2015, pp. 4-37, 62-64, 169-206
  2. 山根紗綾ほか: 精神分析と人間存在分析. 2017, 24, 69-94
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