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認知症は手の施しようのない病気ではありません。認知症の中には身体疾患が原因で起こっているものがあり、これらはその原因である身体疾患の治療を行うことで良くなるものがあります。脳血管障害が原因で起こる血管性認知症も、脳血管障害の進行を抑えることができれば、病態の進行を抑制することはある程度可能です。でも、脳の神経細胞の変性・脱落が生じるアルツハイマー病はそもそも原因がわからず病態の進行を抑制することができないのだから、手をこまねくほかはないのではないか――。多くの方はそのように考えているのではないでしょうか。でも、答えはノーです。
そのことを示唆する重要な研究データがあります。米国では1986年からNun Studyと呼ばれる、高齢の修道女を対象とした加齢とアルツハイマー病の関係を調べる研究プロジェクトが進められていますが、修道女の死後脳を解剖したところ、驚くことに、生前に認知症がみられなかったにもかかわらず脳に高度のアルツハイマー病の病変がみられた例が8%もあったというのです。この研究データはそれまでの「アルツハイマー病の人はいずれ恍惚の人になってしまう」という概念を根底から覆すものでした。つまり、アルツハイマー病そのものを防ぐことはできなくても、アルツハイマー病の発症を予防したり、進行を抑制することは決して不可能ではないのです。
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