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認知症の精神症状と行動異常に対しては、それぞれの症状に合わせた薬物療法が行われます。精神症状と行動異常は家族や介護者にとって介護ストレスを増大させる症状ですから、それらを抑える薬物療法は長期的なケアの観点から、また生活を有意義に過ごすためにも非常に重要といえます。
薬物療法の対象となる認知症の精神症状や行動異常は、うつ症状、幻覚・妄想、興奮・攻撃性、不安・焦燥、せん妄、睡眠障害です。認知症が軽度であれば、必要最小限の薬物療法と併せて、環境を整えたり介護による対応を主体に進めます。
うつ症状に対しては抗うつ薬が用いられますが、なかでも選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)と呼ばれる抗うつ薬がよく使われます。気分や意欲に関わる神経伝達物質にはセロトニンやノルアドレナリンがありますが、うつ症状ではこれらの神経伝達物質の働きが低下しているため、これらを選択的に活性化させる働きのあるSSRIやSNRIが症状の改善に有効です。
幻覚・妄想、興奮・攻撃性に対しては、抗精神病薬が用いられます。これらの症状が起きているときは脳の一部の神経において興奮がみられますが、抗精神病薬は興奮した神経の働きを抑えます。
不安・焦燥に対しては、抗不安薬が用いられます。また、焦燥行動に対しては、一部の抗てんかん薬が有効なこともあります。
せん妄に対しては、それを引き起こした身体疾患への適切な対応、または薬剤の使用が原因で引き起こされた場合には、その薬剤を中止することが優先されます。せん妄により、不安や行動の混乱、興奮がみられるときには抗精神病薬、または抗不安薬が用いられます。
睡眠障害に対しては睡眠薬が用いられますが、高齢者の場合には筋の弛緩作用によるふらつきや転倒を避けるため、より筋弛緩作用の少ない睡眠薬が選択されます。
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