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認知症は、治療と併行していかにケアしていくかが非常に重要です。認知症によって低下する心身の機能をできるだけ維持しながら、これまでと変わらない生活を送られるようにする、いわゆるQOLの観点が重視されなければなりません。特に、認知症によって社会的なつながりが断たれたり、過剰な介護やまったく刺激のない生活に陥ることで心身の機能はさらに低下していきますが、このことは認知症そのものがもたらす脳の機能低下以上に認知症を進行させると考えられています。したがって、残された身体的・精神的機能をできるだけ長く維持するためにリハビリテーションや心理社会的療法を行っていくことが欠かせません。
食事、排泄、入浴、更衣などの日常生活におけるさまざまな活動のことをADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)といいますが、リハビリテーションではできるだけADL訓練を行うことで残存能力を高め、心身機能の活性化を図ります。
一方、心理社会的療法にはさまざまなタイプの治療法があり、おおまかに、次の4つに分類することができます。
認知機能の低下の程度や本人の意欲、精神症状や行動異常の有無などを考慮しながら、ADLのうち、どの活動ができなくなり、どの活動ができるのかを評価し、無理のない範囲で機能回復・維持のためのADL訓練・指導なども行われます。また、立ち上がりや歩行、姿勢を保つなどの基本的な運動機能を向上させる訓練や体操を行い、ADLのための基礎的な体力の維持・向上も併せて行います。
行動志向的アプローチには、行動療法、環境調整などがあります。
問題行動がいつ、どこで、どのようにして起こり、それを誘発する原因・刺激が何であるかといった原因・刺激と反応パターンを分析して、その反応パターンを変えていくことで問題行動を修正していきます。問題行動が出てしまう場合には家族・介護者から問題行動と同時にできない行動(対抗行動)に仕向けてもらうことで問題行動を減少させたり、あるいは問題行動を起こさなかった際には家族・介護者からの賞賛をもらうことで改善されることもあります。
環境調整も行動志向的アプローチの1つで、問題行動を誘発する環境因子があればそれを取り除くようにする方法です。例えば、入浴に伴って興奮や攻撃性が出てしまう場合には、浴室を刺激の少ない内装にするなど、環境を変えることで問題行動を減らせることがあります。また、質問の繰り返しにはカードに答えを示したり、失禁に対してトイレの場所に印をつけるといった環境調整もあります。
情動志向的アプローチには、回想法、バリデーション療法などがあります。
回想法は自分の過去を思い出し、それを語ることで記憶を刺激し、また、懐かしい思い出を振り返ることで情動の安定を目指すアプローチです。回想法は一般的には集団療法として行われ、同世代の共有する思い出を語らうことで社会的交流と外界への関心が促されます。また、自分史を回想することで、1人の経験豊かな大人としての自尊心が高まる効果もあります。
問題行動にどう対応するのかではなく、問題行動に至った感情に着目して受容的・支持的態度による意思の疎通を介して感情を和らげていく方法です。バリデーション療法の背景には、誰かが自分の気持ちに注意を払い、耳を傾け、認めてくれることを知ると気持ちが穏やかになるという考え方が根底にあります。
認知志向的アプローチには、リアリティ・オリエンテーション、モンテッソーリ法などがあります。
時間・場所・状況・人物・周囲の事物などへ意識を向けることによって認知機能に刺激を与え、残された脳の機能の活性化を図る方法です。さまざまな機会をとらえて、周りの方に日時、場所、周囲の事物を問いかけてもらい再確認するなど、意識的に見当識を高め、周囲に関心をもたせられるような働きかけを日常生活の中で行っていきます。
もともと幼児教育法として開発されたメソッドを認知症に応用したもので、認知能力に合わせた系統的な課題を行うことで残された認知能力を維持させる治療法です。実生活で使う物品など認知能力と感覚を刺激する多様な教材を用い、課題やゲームを通じながら認知機能の改善を図るプログラムが系統立てて行われます。課題がうまくできた満足感や達成感により無力感が軽減できるとともに、問題行動の改善につながる機能の改善も促されるなどの効果もみられます。
刺激付与的アプローチには、レクリエーション療法、芸術療法、ペット療法などがあります。
集団で行う運動や娯楽によって、ストレス発散による情緒の安定や問題行動の軽減、認知機能に対する効果が期待できます。レクリエーション活動による対人交流も社会性やコミュニケーション能力の面によい影響を及ぼします。
芸術療法では、音楽療法や絵画療法が行われています。音楽療法では音楽鑑賞のみならず、入浴中や食事中などのあらゆる生活シーンにBGMとして流すことで、焦燥感や攻撃性などの問題行動を減らす効果があるとされています。絵画療法では、作品の完成よりも創作過程に治療効果があるとされています。
ペットと触れ合うことによる癒しの効果で問題行動を軽減させるのがペット療法です。ペットと接することで焦燥感や無欲感が減少したり、挨拶や話しかけたりするような社会性が維持されるなどの効果が期待できます。
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