現在のところ、ほとんどの認知症は残念ながら治癒(完全に治ること)が期待できない疾患です。身体疾患などが原因で起こる二次性認知症の一部に原因疾患を治療することで治癒が望めるものもありますが、アルツハイマー病などの変性性認知症や脳血管障害が原因の血管性認知症では病態そのものの進行を改善することはできず、現段階ではさまざまな治療法により進行を抑えることしかできません。したがって、認知症の治療は、薬物療法によって進行をできるだけ抑制しながら、心理社会的治療を積極的に行うことで残された認知機能を維持し、認知症の人のQOLを低下させないケアが主体となります。薬物療法においては、認知機能障害に対する治療と精神症状や行動異常に対する治療に分かれ、また、変性性認知症と血管性認知症、二次性認知症では用いられる薬剤は異なります。一方、心理社会的療法では、認知症の人に対するアプローチと同時に、家族・介護者に対するアプローチも併行して行われます。
認知症の治療を考える上で重要なことは、認知症を引き起こすと考えられる脳の病変があるからといって必ずしも発症する、あるいは症状が進行するとは限らないことです。脳にはもともとある部位の機能が失われても、他の障害されていない部位の神経細胞がその機能を補うように働く代償機能と呼ばれるメカニズムが備わっており、たとえ脳の病変があったとしても代償機能が働くことで発症を抑えたり、症状の進行を抑制することが可能なのです。ここに早期治療の重要性があります。つまり、認知症を発症しても、薬物療法や心理社会的療法によって脳の代償機能が働くようにすることができれば、残された認知機能は維持され、社会生活機能を保つことは十分に可能なのです。
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